Ethical Issues in Qualitative Research(Marilyn Lichtman)
気づけば一ヶ月以上あいてしまいました!
コツコツ継続するのってやっぱ難しい。
ブログを書かずに何をしていたかというと、
帰省したり発表に追われたりマンガ読んだり・・・
あ、5月は面白いことにいろいろ誘ってもらった月でもありました。
・同期の勉強会
・中学校の放課後学習ボランティア
・PISA調査・海外教科書分析プロジェクト
こんな感じで環境に恵まれてとても刺激的な生活を送っています。
最近は英語論文ばっかりでどれも読みかけなので、発表したのを紹介します。また質的方法についてかよ!って感じかもですが。
Qualitative Research in Education: A User's Guide
- 作者: Marilyn Lichtman
- 出版社/メーカー: Sage Pubns
- 発売日: 2009/03/12
- メディア: ペーパーバック
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このペーパーバックの第4章を担当しました。
- この章の内容
質的研究における倫理的論点、ということで、倫理的な諸問題を扱っていく。
・倫理的なふるまいの定義
・研究を行ううえでの主要原則
・問題の位置づけ
・質的研究に特有な不適切なふるまい
・一般的な科学研究における不適切なふるまい
といったことが主な内容といえる。
- 倫理的ふるまい
一般的定義としては、道徳的原則、規則、人や職業を律する基準
20c以降ようやく研究者の倫理が話題にのぼるようになる。
- 主要な原則
・傷つけてはならない
ex)看守と囚人の実験
・プライバシーと匿名性
研究記録に個人情報を残さない。
・秘密性
社会的弱者の立場に置かれている人はとくに。
・正しい情報を伝えられた上での合意(インフォームドコンセント)
研究方針は変更のたびにきちんと伝える。
・信頼関係と友情
信頼に足る環境を提供しつつ、友達関係は避ける。
・介入
研究デザインにおいて実験時間や場所が負担にならないよう配慮する。
・不適切な行為
「踏み込みすぎかな」と思った時点でアウト。
・データの判断
他者がどの程度この解釈を信頼できるかを判断できる材料を提示する。
・データの所有権と報酬
業績を共有すべきか否か。実際に利益が出る場合はまれ。
・その他論点
政治権力構造との関係、基準は万能ではないということ。
- 基準に関する問題
・研究計画書はどの程度のことを伝えられるのか?
・研究者自身が実験器具の一部である質的研究の特質を審査委員会はどう判断する?
・基準を侵した場合どう制裁を下す?
・審査委員会は大学における支配勢力→マイノリティをどう扱う?
- 科学研究におけるあやまち
・タスキーギ事件
梅毒患者の人体実験。
・David Baltimore
ノーベル賞受賞後、研究仲間のデータ偽造が明らかになる
・Sir Cyril O. Burt
一卵性双生児研究におけるデータ偽造。
大きな対価が得られる場合、有望な研究者でも倫理的判断を誤ることがある。
- 質的研究におけるあやまち
・Harry Wolkott
フィールドに入った部族の青年と性的関係を持つ。
・Laud Humphrey
ホモセクシャル研究において、見張りによって免許証番号を把握し、ランダム調査を装って訪問。
- 質的研究者に特異な問題
・Judyの場合
名前・施設名等を仮名にしたとしても周囲には露呈してしまう。
・Paulの場合
学校長が自閉症の生徒の家庭をフィールドに選択。断りにくかった可能性。(実際には境遇を同じくしていたので慕われていた)
・質的研究においては、対象(subject)というより参加者(participant)。敬意を抱く必要と切り離して見る必要とのバランスが難しい。
・インターネット上ではデータをとられることに憤慨する人もいるが、許可を得るのが困難。
- 基準の設定と維持
アメリカでは、全ての研究に直接もしくは間接的な審査委員会(IRB)の許可が必要。研究計画書の提出、インフォームドコンセントの徹底を求めている。
組織全体の許可を得るのが困難な場合→参加したくない場合それを表明してもらう形で通知を出す。
- まとめ
最終的には自分で適切なふるまいを判断せねばならない。原則に固執せず、ジレンマや葛藤を大事にするべきだ。